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本人特別テーマ『見えない概念に形を与えて見せてくれる本』
敦賀⼈

ちえなみき1階 共読知 エリア内「本人(ほんびと)」コーナーでは、

敦賀で生まれた人・敦賀で育った人・敦賀で働く(学ぶ)人・敦賀に暮らす人に本を紹介いただき、訪れたお客様との「共読」が生まれる仕掛けづくりを行っています。

 

今回は本人サークルのメンバーが考えた特別テーマです。
『見えない概念に形を与えて見せてくれる本』
第一弾:「愛」
こちらはメンバーからの紹介で繋いでいきます。

 

———————————————— 1人目 ————————————————

『リトル・トリー』 出版:めるくまーる
フォレスト・カーター/著 和田穹男/訳

ライターの修業を始めた時、お師匠様が言った。
「悲しそう、嬉しそう、辛そう。他人を見て、そう感じた時、あなたはその人の何を見てそう感じたのか?それを文章で表現するのが、ライターの仕事です」

たしかにその通りだ。
「眉根を寄せてうつむき、肩を震わせている」「瞼が腫れて目が赤い」など、具体的な様子を見て、私たちは「悲しそう」だと判断している。

では、「愛」はどうだろう?
何を見た時、私たちは「愛」を見たと思うのだろう?

私にとって、「リトル・トリー」は愛の教科書だ。
この本の登場人物たちは、お互いに愛を贈り合い、受け取り合って、貧しくても豊かに暮らしている。
愛が、ここでははっきり見える。
自分の愛情が間違っているのではないかと思う時、私はいつもここに立ち戻ることにしている。

▼選んでくださった方
はんだ
ライター
敦賀の好きなところ…綺麗な海がすぐそこにあるところ

———————————————— 2人目 ————————————————

考察① 「愛」本を読む

「愛」は、どんなこととも結びつくものです。まるで、アートのようなもので、何であってもアートと称していればアートとなる。たとえゴミであってもアートとなる。本当は違うのに、アートだと言い張る人もいる。アートと言っていいのは、「見たり、聞いたりした人を動かすもの」です。生まれ変わるのです。変化があるのです。それ以外はゴミです。それが自分の表現なんだと言い張る作者はアーティストでもありません。ゴミ拡散者です。人を動かすものが「アート」なのです。

そして、「愛」はその人なりに大事なものや人などを大事にすることであって、各人で異なるものです。大事にすること、大事に思うこと、それが「愛」です。絶対の愛は一神教の中にしかないと思います。
正解もなく間違いもなく、あるのは振り返ったときにあったみちしるべです。
クイズでもないけれど、どのように結びつき、どういう愛なのか、なにを愛と感じるのか、それぞれの愛を振り返り、ひとり沈思黙考。

尾崎翠の『第七官界彷徨』ほど匂ってくることもなく、山尾悠子の『夢の遠近法』ほど迷宮的でもなく、中部博の『プカプカ 西岡恭蔵』ほども一途でもなく、堀辰雄の『風立ちぬ』ほども純粋でもやさしくもなく、太宰治の『斜陽』ほども没落癖もなく、稲垣足穂の『一千一秒物語』ほども儚くもなく、マンディアルグの『オートバイ』ほども耽美的でもなく、夢野久作の『ドグラ・マグラ』ほどもおどろおどろしくなく、寺山修司の短歌ほども創作されてもなく、宮武骸骨ほども過激でなく、・・・
おだやかな生活の中で上手に老いていきながら感じる「愛」もいいですよね。

 

考察②「ミュージシャンにおける愛の迷走」

早川義夫は、『ラブジェネレーション』で、おとなしい狂おしさがある。
忌野清志郎は、『愛し合ってるかい』で、染み入るやさしさがある。
あがた森魚は、『愛は愛とてなんになる』で、何を歌ってもしみじみと聞かせてくれるため息がある。

それにしてもどの本も、この時代の人たちは林静一とラブアンドピースなんだなぁ、と。ならば、今生きている僕たちの愛は何とともにあると言えばいいのか。

 

考察③3冊の本

『東海林さだおの弁当箱』
出張の帰りの新幹線で読んだ週刊誌の連載にはまり、このこだわりにハマってしまいファンになった。

『死にゆく妻との旅路』清水久典
鈴木清順出演のテレビドラマ『みちしるべ』の原作かもしれないと探して出会った。(原作ではなかったが)

『イサム・ノグチ』ドウス昌代
石を扱いながらも紙をあつかったAKARIをつくっていくこのアーティストの生い立ちにはじめて触れた。

食事、旅、あかりが並んで指差すのは愛のように思いました。

 

<本人展示>
『あの頃、忌野清志郎と ボスと私の40年』 出版:筑摩書房
片岡たまき/著

ご紹介しますこの本は、RCサクセションの熱烈なファンから追っかけになり、その後マネージャーになった著者とボス(忌野清志郎)の40年間の「回顧」です。まさにファン愛に満ちたものが詰まっていても、きよしろ〜!でもなく、清志郎様!でもなく、キヨシロちゃん!でも、清志郎命!だけでもない記録です。忌野清志郎とスタッフとの信頼関係は、ステージに集約されていきます。最後は、清志郎がやりそうなことがプロデュースされた青山葬儀所でのあのロックン・ロール・ショーのスタッフとして、しみじみとも愛情いっぱいのお別れをしていったことが記録されています。

▼選んでくださった方
下地草生
敦賀の好きなところ…気比の松原の秋の夕暮

———————————————— 3人目 ————————————————

『エミリー』 出版:集英社
嶽本野ばら/著

『男女の友情は成立するか』。何億回も議論されて何の一般的な結論も出ていない問いに、『男女の恋愛は成立させねばならないのか』という問いを重ねたい。
ジェンダーレス・フリーを謳いながら時代は混沌、恐ろしく的外れな平等を掲げる世間に辟易としながら、私は生きることに息苦しさを感じる時、この物語に帰ってくるのです。

男と女が何の違和感もなくただの異性として惹かれ合い、夫婦として永遠の愛を誓い、心身ともに結ばれ、子孫を残す。
誰もがきっと幸せだと思うであろうことを、この主人公たちは成しません。
幼少期の出来事から男性恐怖症になったエミリーと、ふとしたきっかけで自身がホモセクシャルだと気付いてしまった”あなた”

別々の事情で異性を受け入れられなかったふたりが、確かに、幸せに”番った”
それは紛れもなく愛だったから。

ひとつひとつの言葉が脳に、体に、心に響く。
私にも帰る場所があった。帰ってくる夜があった。
と、涙しながら、私はいつもこの物語に帰ってくるのです。

『男女の友情は成立するのか』『男女の恋愛は成立させなければならないのか』…『”愛”とはなんなのか』を魂から感じられるお話です。

▼選んでくださった方
せきもと なほこ
敦賀の好きなところ…季節になると東浦に並ぶみかん